2017/08/15

 首里、那覇、泊という地域は、古来、空手の発祥の地として知られていますが、その他にも多くの地域に武勇伝が存在する。その一つとして、那覇市宇栄原があります。

 宇栄原は、ゆいレール赤嶺駅と沖縄空手会館の近くにある海軍豪公園の間に位置しています。地域の有名どころとして下ヌ御嶽があり、ある資料では、次のように述べられています。

 「この辺りは通称マチガーでと呼ばれています。ここは、小禄では戦後復興がスタートした場所で多くの人がここに住みました。すぐ側にマチガーの御嶽があります。『琉球国由来記』の中に松川(マチガー)という村名は出てくるが、松川の嶽というのは出てきません。ところが殿(1)のところでみると、マチガー嶽の殿というのが出てきます。どうやらここは、松川部落の 殿と嶽が一体となったところと解釈できます。

 

(マチガー)

 

 

 殿というとナー(庭)だけという場合があります。お祭りをする場所ですが、そこに嶽があるということで、ここにはマーニの木、聖なる木が植えられており、聖なる場所であることを表しています。

 昔は、字栄原というところは武士がたくさんいました。その武士達は、毎晩ここで空手の練習をしていたそうです。沖縄の武士というのは、大和の武士と違って、腕っぷしの強い男ということです。」

 別の文献では、故地元の長老の話も記録されている。「宇栄原に、七ケーン坂小(びらぐがー)(2)と言うこうねりくねりの坂道がありました。昔は宇栄原に、そうとう武芸の達者な方がたくさん生まれて、それは困るというので、その七ケーン坂小を改修しました。改修後、宇栄原には武士は生まれなかった」。

 武士が練習していた場所は今、高前原公園として整備されています。

 

(下ヌ御嶽)

 

 

 なおこの字栄原にて、旧暦の625日(3)の直後の日曜日に宇栄原の綱曳きが開催されます。2017年は、8月20日(日)に行われます。勇壮でケンカ綱と呼ばれるような綱引きもありますが、宇栄原の綱曳きは上品で、素朴な行事です。稲の収穫に感謝するお祭りです。

 また地元在住の人による地域巡りツアーもあります。興味ある方は、沖縄空手案内センターへお問い合わせください。

 

脚注:

  1. ここの殿は、殿内のことと思われます。
  2. 推測として、ケーンは「間」のこと、いわゆる1,8メートルのことで、七ケーンは、12,6メートルのことと思われます。
  3. 6月カシチーとは、旧暦の伝統行事の稲の収穫祭です。旧暦の6月25日に付けられているこの行事では、火の神や仏壇に炊いた新米の強飯(カシチー)をお供えします。

 

※公園の住所は、沖縄県那覇市高良2丁目5

 

参考資料:

 おろくの歴史を訪ねる講座(那覇市小禄南公民館、1993年)

 那覇の民話資料(那覇市教育委員会、1984年)