空手道の良さは
2020.07.03

 

 吾が沖縄の祖先が残した空手道は一千年の長い歴史に培かわれ、幾多の重圧に屈する事なく「空手に先手なし」の真理を発見したのであります。「空手に先手なし」の真理が現在も将来も変る事がなく発揮された時に世界の真の平和は生まれると確信するものであります。

 空手道の良さは

  一、空手は一人ででも稽古が出来るしまた多勢一緒にでも練習ができる。

  一、空手は子供でも老人でも男でも女でも誰にでも自由に稽古ができる。

  一、空手の稽古は各自の体力に応じて激しくも軽くも自由にできる。

  一、空手の稽古は狭い所でも一向に差支ない。

  一、空手は胆力のないものに胆力を与え根性のないものに根性を与へる。

  一、空手は健康を増進し仕事の能率をも倍加させる。

  一、空手は人生を明朗化して寿康両全を保証する。

 

 このような理想的な文化財が世界のどこの国にあるでしょうか。こんな小さな島国で長い歴史を通じて「真理は風節に耐える」と云う先人の言葉通り現代に生きつづいてきたのが不思議なぐらいです。

 

 1967年12月10日

 第一回空手道・古武術演武大会

 主催:全沖縄空手道連盟

 全沖縄空手道連盟会長 長嶺将真

 会長挨拶からの抜粋

無形文化財保持者6人追加認定
2020.05.19

 519日に、「沖縄県広報」を通して、沖縄県教育委員会(金城弘昌教育長)は、県指定無形文化財「沖縄の空手・古武術」の保持者として追加認定を発表した。新たに認定された先生方は次の通りです。

  髙良信徳(90歳、上地流)

  伊波清吉(87歳、小林流)

  仲程力(86歳、上地流)

  伊波光太郎(81歳、古武術)

  真栄城守信(75歳、小林流)

  喜久川政成(74歳、剛柔流)

 

地元の新聞記事:

 琉球新報

 沖縄タイムス

「真の花」と「時分の花」
2020.04.27

 室町時代、今から五~六百年前の能役者、世阿弥の風姿花伝の芸術論に

 「真(まこと)の花」と「時分(じぶん)の花」という素晴らしい言葉が残されております。

 端的に申し上げると、時分のお花は「その時限りの魅力」に対して真の花は「決して散ることのない魅力」と表現される場合があります。

 そこで、この世阿弥の芸術論と空手道に合い通じる深い哲学があることを申し上げたい。

 折しも、沖縄の空手が東京オリンピックの正式種目となり、関係者は大変喜んでいるようでありますが、これを契機に指導者の皆さんには、空手道の本質をしっかりと掴み、後世に引き継ぐと同時に、本質と発祥の誇りを全世界に発信することを切に願っております。

 現今の県内の空手指導者たちには、伝統空手とスポーツ空手を推進する団体があるように見受けられます。

 スポーツ空手は文字通り若さ漲るパワーや演技で、それは見るものを魅了するもので「時分の花」に例えられます。それはややもすると勝負にこだわり、金メダルという名誉や金銭に結び付きやすい傾向にあるのではないかと思われます。

 一方、たとえ若い時に時分の花を咲かせた後も、生涯に亘りたゆまぬ努力を重ね、磨き抜かれたところから発する、言うに言われぬ美を発するのが「真の花」であり、風姿花伝の芸術論と見事に一致している事に、卓見した世阿弥の言葉だと感服しております。

 真の花・・・「奥妙は錬心にあり」

 伝統空手は単なる技や勝負ではなく、空手道という厳しい鍛錬・修行をする中で人格を磨き、心・技・体の一如を目指すものであります。

 この「真の花」という言葉には深い哲学があり、禅の心があると着眼しております。

 また、歴史上、かの柳生宗矩や山岡鉄舟など、皆この真の花を具現させた人達です。

 スポーツ界の金銭や名誉・権力がはびこる中で、スポーツ空手を全く否定するものではありませんが、物に囚われて心を失っている今日、沖縄の伝統空手の本質を再認識し、沖縄の文化や教育発展に寄与してもらいたいと思うのであります。願わくは、沖縄の空手指導者たちが、この世阿弥の哲学の一端にでも触れて、より深く追求し、精通されんことを期待するものであります。

 

 某禅僧の手記

 

 

1969年の「沖縄公開の夕べ」特集
2020.04.14

 1969年1010日、日本武道館において全日本空手道連盟主催の「第1回全日本空手道選手権大会」が開催されました。

 その際に東京の会場にて、発祥の地・沖縄から沖縄空手の重鎮らが全国特別招待模範演武「沖縄公開の夕べ」を行いました。

 演武に先だって925日に、沖縄タイムスホールで演武が行われた。この演武を機に、3回に分けての特集が沖縄タイムスに掲載され、次の大家が紹介されました。

 沖縄タイムスの許諾を得て、沖縄空手にとって財産であるこの連載を紹介いたします。 

 

    1969年920日掲載:「沖縄公開の夕べ」(上)

        兼島信助(渡山流)/長嶺将真(松林流)

    1969年921日掲載:「沖縄公開の夕べ」(中)

        久志助恵(松林流)島袋善良(少林流)

    1969年922日掲載:「沖縄公開の夕べ」(下)

        比嘉佑直(小林流)/八木明徳(剛柔流)

 

空手に関する重要な学術的研究の再紹介
2020.03.12

 

 1940年沖縄県うるま市与那城屋慶名生まれの中村完氏は、1965年に琉球大学教育学部を卒業した。

 その後、1985年に九州大学より博士号の学位を取得した。学位論文のテーマは、「スポーツ者の心身統御に関する心理学的研究一空手道修行者を対象として-」(1985)でした。それまで、中村先生の主な論文として、「空手修行者の心身機能に関する心理学的研究」(1977、写真、沖縄空手会館閲覧室蔵)、「空手道形の生体反応に関する生理心理学的研究」(1981)、「空手修行者の筋活動の統御に関する実験的研究」(1981)、「空手道修行者の人格特性に関する研究」(1982)、「空手道者の脳波Biofeed-backに関する研究」(1984)が挙げられます。

 以後も「武道者の人格特性について一空手道者を対象として(1989)、「空手道修行者の健康に関する心理学的研究」(1990)なども発表しました。

 

参考資料:中村完教授の略歴と業績(高良美樹著)