2020/07/31

 19225月、船越義珍先生は文部省主催「第一回運動体育展覧会」において琉球唐手術を紹介した。その後、柔道の総本山講道館で公開演武が行われた。その時、沖縄県立師範学校を卒業して東京商科大学(現一橋大学)に進学していた儀間真謹氏(18961989)が助手を努めた。  

 儀間氏は、師範学校で糸洲安恒や屋部憲通の諸先生に師事した。以後、空手の普及に努められ、現在、儀間派松濤館流空手道として儀間先生の空手が継承されています。

 下記、儀間先生が執筆した記事「継続は力なり」を紹介します。

 なお、2011年923日、「儀閒先生23回忌と樋口師範の古希のお祝い」というパーティが開催された。その時の沖縄県指定無形文化財保持者の東恩納盛男先生の挨拶文の中で、儀間先生の人なりが紹介された。下記に挨拶全文を掲載します

 

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「継続は力なり」

 

全空連相談役

八十一翁

儀間真謹

 

 (緒言)私の生れた処は、沖縄首里金城町で、谷底見たような、何処へ出るにも石畳の崎嶇羊腸たる坂道で、幼い頃、素足で駈け昇り降りしたので、脚が丈夫になった。また赤貧洗うが如き家のため粗衣粗食、上級学校に進む時も無学資、アルバイト等した。その上、父五十七歳、母四十六歳の老の子で体が弱いので、健康第一と十五の時、空手、静座法に専念、一方スマイルスの西国立志伝や修養本を繙読して、丹そ偉人傑士は貧の蒸溜器を通過したものと、大いに発憤した。

 次に、空手新聞社からのご依頼により私の拙い体験から、前途有望の後進のために、老婆心から、空手について一言―

 「正しい拳は正しい心から」-そもそも空手道の目的は、心身の鍛錬にある。つまり空手道を通じて人格完成に心掛けることで、昔、沖縄では空手の達人を武士といった。人格者即ち君子の謂である。

さて、技術は鍛えれば、ある点に達しられるが、精神的の面は、終生到達点がない。四六時中猛鍛、苦鍛、禅と同じで常住坐臥空手に精通することで、拳禅一致という所以である。

 また、よく稽古せよというが、稽古とは古(いにしえ)を稽(かんがえる)ということで、「温故知新」という言葉通り昔の拳聖の苦心惨胆、編み立した形をみっちり学び(学びは真似ること)反復練習し、それをもとにして生々発展して行くこと。そして三日坊主でなく努力、努力、生涯続けること―「継続は力なり」といわれている。

 老兵は消えてゆく。春秋に富む若人よ我々老人を飛び越えて猛進されんことを熱望して擱筆する。終りに愚作一つ。

 人多き人の鑑(鏡)にならばやと

 磨け若人 空手魂

 

(筆者は東京都空手道連盟顧問、渋谷区空手道連盟会長)

 

空手新聞 第98

「展望車」コーナー

発行所:空手新聞社

発行日:昭和52820

 

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<<東恩納先生のメッセージ>>

儀閒 真謹先生

 樋口邦夫師範の御手紙儀間先生の二十三回忌法要と拝見し、四十年前の代々木修練会道場時代を 思い出してきました。儀間先生がお亡くなりになってから早や二十三年前だと知り、時のたつのが 早く感じました。
 儀間先生は武道家であり、教育者でもありました。先生は文武両道を会得された武人であったとい えます。儀間先生は空手を日本に普及された功績は大きいと思います。
 船越義珍先生と共に、嘉納治五郎先生のお招きで柔道の大本山講道館で空手の型を演武披露され、 空手の普及発展のきっかけをつくったこと(尽力)は大きいです。
 私が儀間先生にはじめておあいしたのは一九六〇年時代で、代々木修練会、長崎飯店の二階の宴会 場であったかと思います。その後新垣先生の依頼で週三回(火・木・土)代々木修練会道場で指導さ れたと思います。
 儀間先生の代理として樋口邦夫師範が助手として指導されていたと思います。儀間先生は教育界を退職 し、鹿島建設に勤務され、同建設会社の空手道部を指導された。東京の日本武道館での全日本空手道選 手権大会に於いて樋口師範を相手に模範演武を拝見したことがあります。投げ技が見事な演武で未だに 脳裏に浮かんでいます。普段の儀間先生は穏やかな物静かな人物だといえます。
 儀間先生は沖縄空手の歴史、とくに人物に詳しく、人名・年月日詳細に語られたことに感銘を受けた ことがあります。儀間先生から私は棒の型を教わったことがあります。儀間先生は船越義珍先生の三男 義豪先生からの伝授だということで教わりました。とくに印象に残ったのは、棒の突き方が非常に力強 く迫力があったことは未だに忘れません。
 道場訓も儀間先生のおしえでした。代々木修練会道場で稽古された門人全員流派関係なく儀間先生の徳 にふれていますので、皆んなの心の中に儀間先生は生きております。私自身はせんせいのご恩を一生の 宝として心にきざみ精進したいと思います。
 儀間派松濤館流は樋口邦夫という立派な武道家が継承されています。継承された樋口邦夫師範には心から 敬意を表します。儀間先生には心からなる感謝を祈り捧げます。
 合 掌

国際沖縄剛柔流空手道連盟
主席師範 東恩納盛男 拝

参考資料:儀間派儀間派国際空手道連盟のウェブサイト